Charlotte Chesnais

ブティック シャルロット・シェネ

10, rue d'Alger

Paris 1er

Charlotte Chesnais

シャルロットがパリのブティックのデザインを担う存在に選んだのは、オランダの建築家のアンネ・ホルトロップ氏。シャルロットが求めたのは、「ただ美しい空間ではなく、ブランドの精神がナチュラルに溶け込むものでありながらどこか不自然で、印象に残る体験」。そんな彼女の思いを叶えるための鍵を握っていたのが、まさにホルトロップ氏でした。彼はシャルロットとパリの自宅で会った時に、シャルロットの思いに応えるべく提案したのが、まるで氷の塊のようなアクリル素材。それはミステリアスで未来的でもあり、彼のこれまでの建築に対する疑問を体現したものでした。しかし、ホルトロップ氏はそのアクリルオブジェを透明に仕上げたことがなく、彼にとっても大きな挑戦が幕開けとなったのです。

1年後、ぎっしりと巨大な透明のアクリルオブジェが見事に完成しました。異国の砂を閉じ込めたこのオブジェは、タイムレスなパリのブティックの空間を占領し、存在感を放ちます。店内に立つアクリルブロックの表面は波立ち、キラキラと光を放つ水面の輝きのよう。オブジェを観察すると、マグマのような流動的なフォルムに魅了されるでしょう。ホルトロップ氏は「このオブジェは、想像の世界と現実の世界を繋いだ私の作風を体現しています。シャルロットのために作った、砂のようなパターンを施したアクリルオブジェは、山や谷、川や川底に沈む砂や岩を連想させます。私にとって、作品は想像の世界、現実世界などさまざまな世界を交差させたら完成するんです」と語ります。

「耳」「首」「手」を表現したオブジェはシャルロット自身がデザインし、滑らかな金属で作りシュールレアリズムを彷彿とさせます。マルモニーノのコーティングを施したオブジェは荒々しさもあり、まるでオアシスのような店内にコントラストを生み出します。インスタレーションは視線を窓の外まで伸ばします。「元々の外装をそのまま使うこともできましたが、より溶け込むように色を内装と同じものにしました。シンプルな外装はお店の中に自然光を取り込みやすくするだけでなく、外からお店の世界観を楽しむことができます」。

上質な素材とまっすぐなラインを巧みにいかすホルトロップ氏は、次世代の最も優れた建築家の一人。今回の店舗デザインは、「トレイルハウス」やオランダにあるウオーターライン博物館など、彼の他の作品から一目おくプロジェクトとなるでしょう。一方で、素材や素材の世界観を生かす彼の建築スタイルは健在です。これにはシャルロットも「ホルトロップ氏による素晴らしいクリエイションは、私も大切にしている素材とフォルムの魅力を生かしています」と、喜びを表しました。「これにより、時や空間を超越した概念を連想させることができます。現実世界とは違う世界観こそが、私の作品の根底にあります。初のブティックは、訪れるすべての人に、他にない体験を与えることを願っています」。

Charlotte Chesnais
Charlotte Chesnais

アンネ・ホルトロップ氏とのインタビュー

アンネ・ホルトロップ インタビュー

2020年11月

ファブリス・パイヌー氏(以下、FR):初期のインタビューで話していたロバート・マクファーレーン氏の本「アンダーワールド」が、今回のシャルロット・シェネの店舗デザインのインスピレーション源になっているのでしょうか。

アンネ・ホルトロップ氏(以下、AH):マクファーレン氏の本の中にある「発見とは、発掘することによって何かを明かすこと」という一文が大好きなんです。この本の中では、下界(underworld)を、地球の表面下にあるものとして探求しています。土の中を”掘る”のは、ものを埋め、隠すためだけでなく、新たなものを作り上げる素材を調達するためにする行為です。この調達というのが、われわれ人間が物事を作るすべての始まりにあるので、興味深いですよね。シャルロットのブティックを作るにあたっても、常に自然界に繋がりがあるように考えました。店内を飾る巨大なオブジェは、コンピューターによって自動化したCNC加工プロセスを用いながら、砂をスキャンしてデザインしました。

FR:シャルロットと初めて会った時のことについて教えていただけますか。

AH:デザイン事務所のデセル パートナーズを介して知り合い、パリにある彼女のスタジオで初めてお会いしました。その日はジュエリーケースのアイデアの火種となるべく、砂で模ったエポキシ(樹脂)素材を持ち込みました。子供二人と家族も連れて行き、次の日にはジュエリーの職人にも会いました。私とシャルロットではいろんな共通点や繋がりがあることを知りました。

FR:なるほど。なぜこのプロジェクトを引き受けたのですか?

AH:私は建築家なので、ファッション業界に携わるようになったのは実は最近で、「メゾン マルジェラ」の仕事を通してです。シャルロットに関しては、元から彼女のジュエリーが大好きだった上に、初のブティックであったことが決め手となりました。建築家として、私は空間の中にある物よりも、空間そのものを優先的に考えます。私はシャルロットのジュエリーや世界観を表現し、ブティックの空間を彩ることができると思った素材を選ぶことから始めました。その考え方を、シャルロットは気に入ってくださったんです。

FR:どのようにシャルロットの世界観を表現したのでしょうか?彼女の作品をまずは見てインスピレーションを受けたのか、はたまた全く逆のアプローチであえて彼女の作品とは違う世界観を作ったのですか?

AH:彼女のジュエリーのための世界を作る、というアプローチを取りました。ジュエリーのディスプレーやジュエリーそのものから考えるというより、ジュエリーが住む世界・空間を考えました。

FR:素材を生かすモノづくりについてよく考えますか?

AH:建築物の素材は、よく建築の工程や、表現の方法として捉えられることが多いです。私個人の素材との向き合い方は、素材を操る工程や、その素材が呼び起こす作法にフォーカスするようになりました。これによって、私はモノをただ作るためにある建築という従来の考えではなく、新たな建築の表現方法を可能にしました。

FR:素材に目を向け、その素材が必要とする加工方法や工程にフォーカスを置くようになりましたね。今回の店舗においても同じでしょうか。

AH:もちろんです。私はCNC加工した大きく分厚いアクリルシートをディスプレイや彼女の作品の空間の装飾として提案しました。人工的な素材と自然界からとった砂が、現実と非現実の二つの世界を表現しているんです。

FR:今回のプロジェクトはバーレーンに住みながらの初のパリのプロジェクトですか?どのような経験になりましたか。

AH:元々アムステルダム出身なので、パリには近く市内のことはよく知っていました。2018年に「メゾン マルジェラ」の仕事を始めたのですが、私が手がけた初の店舗は実は「MM6 メゾン マルジェラ」のロンドンの店舗でした。今パリのモンテーニュ通りの店舗を準備中ですが、シャルロットのブティックはそれよりも前に完成する予定なので、初のパリのプロジェクトですね。私はバーレーンから、離れた地から働くのが好きです。集中できますし、余計な誘惑もないので。しかし今の世界の状況(インタビュー当時はコロナ禍真っ只中)からすると、正直隔離生活も苦しくなってきました。でもみんな同じ状況ですよね。

FR:ご自身の素材に対する向き合い方はとても”フィジカル(物理的、現実的)”なアプローチと説明されていますが、同時にとても抽象的でミステリアスなものに感じます。インタビューでも”ミステリアス”という言葉を何度か使っていますが、どうお考えですか?

AH:自分の作品は、一つ一つの工程が順序的に生み出す結果に完成するものだと捉えています。物理的な側面は素材を実際に手に取り、加工し、操ること。その工程を経ていくと、次のステップが見えてくるんです。そこからさらに次の工程が見えてくる。次にどのようなステップを取るかは、あまり神経質になりすぎず、オープンに、思うがままに制作を続けます。一方でより抽象的な側面もあります。それは想像力です。シャルロットのために作ったアクリル素材に含まれていた砂を見て、私は山や谷、川、川底の堆積物を思い浮かべました。いくつかの現実が混じり合うと、いい作品ができた、と思えるんです。

FR:このブティックの目玉は、まさに店舗の中央にあり、シャルロットのジュエリーをディスプレーするテーブルだと思うのですが、詳しく教えていただけますか。

AH:そうですね。もはやこのお店には大きすぎるくらい、空間を埋め尽くしました。残りのアイテムは、壁に並ぶキャビネに収納するしかなかったくらい存在感があります。このお店に入った瞬間、大きなテーブルと上から光を照らす照明に目がいくでしょう。このテーブルは、シャルロットの世界観全てを物語っています。

FH:「メゾン マルジェラ」のロンドンの店舗に次ぎ、2個目のファッションプロジェクトですが、ファッションとはどれくらい親しみがありますか?そもそも、ファッションは建築と同じようにアートの一種ですよね?共通するものはあると感じますか?

AH:私はファッションの世界の部外者だと思います。ファッション界のルールなんて全くわかりません。だからこそ、ナイーブで斬新なアイデアを提案できると思っています。私はいつも作品を作る時、デザイナーの世界観をどのように空間づくり、素材、作法に落とし込めるかを考えます。これまで幸運にもジョン・ガリアーノとシャルロット・シェネと働くことができました。次のプロジェクトでは、ぜひ生地を素材として空間に取り入れてみたいですね。生地は柔軟性が高く、親しみもある素材です。遊牧民のテントから、最新の技術を用いていろんなコンディションに対応できる最先端素材まで、可能性は無限にあります。楽しみですね。

FR:店舗を作るということは、内装だけでなく外装や窓もデザインすることですよね。どのようなアプローチをとったのでしょうか。

AH:オリジナルの外装はそのまま残しつつ、より溶け込むように色を内装と同じものにしました。シンプルな外装はお店の中に自然光を取り込みやすくするだけでなく、外からお店の世界観を楽しむことができます。シャルロット・シェネのブランドロゴはガラスで作り、ウィンドーに貼り付けました。店内の世界観を外にも取り入れることで外からもブランドの世界観を伝えています。

FR:今回のお店は建物全体ではなく、一部をデザインしていますが、どのようにアプローチしましたか?今回の経験で学んだことはありますか?

AH:建築家として、私は建物の外装・内装のこと、隣り合う建物や周りの空間を一緒に考えます。「トレイルハウス」やウオーターライン博物館など私の他の作品でも、まずは周りの環境とどのように協奏できるかを考えました。外の世界と中の世界は常に混じり合っているんです。お店のデザインでは、お店の中にしか存在しない世界という概念が面白いと思いました。

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